抹茶ができるまで:碾茶から微細な粉末へ
監修:株式会社 脇本常香園(宇治茶製造卸・京都)
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抹茶は緑茶をそのまま粉にしたものなのでしょうか。
原料は一般的な煎茶ではなく「碾茶」です。被覆、蒸熱、揉まずに乾燥、仕立て、粉末化の順に見ていきます。
抹茶の原料は、なぜ煎茶ではなく碾茶なのですか?
日本茶業中央会の定義では、碾茶は摘採前に2〜3週間程度被覆した茶葉を蒸熱し、揉まずに碾茶炉等で乾燥したものです。そして抹茶は、その碾茶を茶臼等で微粉末にしたものとされています。
ここで大切なのは、「揉まない」という点です。煎茶は一般に、蒸した後に揉みながら乾燥し、お湯で成分を浸出して飲みます。一方、碾茶は揉まずに乾燥するため、葉が比較的平たい状態に仕上がり、後で粉末にする前提の茶葉になります。
碾茶そのものについてもう少し詳しく知りたい方は、用語集の碾茶の解説もあわせて読んでみてください。
被覆すると、味わいはどう変わるのでしょう
碾茶づくりでは、摘み取る前の茶園に覆いをして、茶葉に届く光を抑えます。本書では、遮光率は95〜98%です。光を抑えることで、テアニンからカテキンへの変化が抑えられ、うま味が多く、渋みが穏やかになりやすいとされています。
伝統的な本簀は葦簀と稲藁を使い、寒冷紗は化学繊維の資材を使います。覆いはもともと霜よけとして始まり、のちに色や味を整える栽培技術へ発展しました。これらは碾茶栽培の説明であり、ICHIZENの原料仕様を示すものではありません。
味は茶葉の状態、仕上げ、保管、点て方でも変わるため、被覆による違いは傾向として捉えてください。
煎茶と碾茶の違いを、工程で見てみましょう
| 項目 | 煎茶 | 碾茶 |
|---|---|---|
| 栽培 | 露地栽培が一般的 | 摘採前に2〜3週間程度被覆 |
| 加熱 | 蒸熱 | 蒸熱 |
| 乾燥 | 揉みながら乾燥 | 揉まずに碾茶炉等で乾燥 |
| 飲み方 | お湯で浸出して飲む | 微粉末にして湯や水に分散させて飲む |
こうして比べると、抹茶は「粉にした煎茶」ではないことがわかります。似ているようで、設計思想が違うお茶なのです。より広い違いは、抹茶と緑茶の違いの記事でも整理しています。
揉まずに乾燥した後、何が行われるのですか?
宇治の伝統的な茶園では、枝を広げた自然仕立ての茶葉を、枝先から折るように手摘みする「折摘み」が行われてきました。蒸した葉を乾かす碾茶炉は、下段が180〜200℃以上になる構造で、葉を揉まずに乾燥させます。これも伝統的な工程の一般論です。
乾燥した碾茶は、切断、篩、唐箕、乾燥、選別を重ね、茎や葉脈などを取り除く「仕立て」を行います。この工程によって、粉にしたときの舌ざわりや香り、色の印象が整えられます。
その後、仕上げた碾茶を微粉末にします。伝統的には仕上碾茶を石臼で挽きますが、定義上は石臼に準じた機能を備える粉砕方法も含まれます。
ICHIZENの抹茶は、京都・宇治の茶を、京都・井手町の四代続く茶問屋である脇本常香園が選定・精製しています。粉末化は石臼ではなく、機械粉砕により、微細で均一な粉末に仕上げています。
抹茶は「溶けている」のではなく「分散している」飲み物です
抹茶は水に完全に溶けるのではなく、細かな茶葉の粒子が分散した飲み物です。時間が経つと沈むのは自然なため、飲む前に軽く混ぜます。
工程を知ると、選び方も少し楽になります
価格や味は、栽培、碾茶づくり、仕立て、粉末化、保管の積み重ねで変わります。薄茶なら香りや口あたり、ラテや菓子なら色と風味の出方を見ます。価格の背景は、抹茶が高価になりやすい理由も参考になります。
まとめ:抹茶は、碾茶から生まれるお茶です
抹茶は、煎茶を粉にしたものではありません。被覆して育てた茶葉を蒸し、揉まずに乾燥させ、精選し、微粉末にすることで生まれます。
工程を知ると、味の背景も見えてきます。
参考にした公開資料:日本茶業中央会「緑茶の表示基準 名称及び定義」ほか
よくある質問
抹茶の原料は煎茶ですか?
いいえ。抹茶の原料は、摘採前に被覆し、蒸した後に揉まずに乾燥させた碾茶です。煎茶は一般に揉みながら乾燥し、湯で浸出して飲みます。
抹茶は水に完全に溶けていますか?
抹茶は水に完全に溶けるのではなく、細かな茶葉の粒子が分散した飲み物です。時間が経つと沈むことがあるため、飲む前に軽く混ぜると整います。
石臼で挽いたものだけが抹茶ですか?
伝統的には仕上碾茶を石臼で挽きますが、定義には石臼に準じた機能を備える粉砕方法も含まれます。ICHIZENは機械粉砕で微細な粉末に仕上げています。
被覆栽培の抹茶は渋くないですか?
被覆により光を抑えると、テアニンからカテキンへの変化が抑えられ、うま味が多く渋みが穏やかになりやすい傾向があります。味は茶葉や点て方でも変わります。
参考文献
- 桑原秀樹『増補改訂 宇治抹茶問屋4代目が教える お抹茶のすべて』誠文堂新光社、2019年、p.034–041、p.044–046
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